看護師キャリアガイド

働くナースのスキルアップ

リエゾン精神看護専門看護師

心のケアはナースにも必要院内の連携を強め、そして患者ケアの向上へ

精神看護専門看護師は、精神疾患患者に対して高度な看護を提供する知識や技術をもっています。患者さんへのケアはもちろんですが、医療の質の向上や複雑化の中で、本来ケアする立場の看護師が、病んでしまう現場もあります。患者さんをケアするナース自身が心身共に健康な状態であることが、非常に大事です。リエゾン精神看護専門看護師は、患者さんと、患者さんをケアする看護師をケアすることによって、よりよい医療を促進する重要な役割なのです。

精神看護専門看護師インタビュー

林田 由美子さん

リエゾン精神看護専門看護師
癌研有明病院
一般外来
林田 由美子さん
趣味:バスケットなど
http://www.jfcr.or.jp/hospital/

現在はどのような業務をされていますか?

今は一般外来の所属で、一般外来の診察の介助をしながら精神看護専門看護師の仕事もしています。一般の外来には、腫瘍精神科外来や緩和ケア外来のほかに、皮膚科や形成外科、総合内科など、いくつかの外来も入っていて、外来スタッフの協力のもとで、リエゾンナースとしての業務を行っています。リエゾンナースの仕事の一つとして、私は「看護相談外来」を開いています。そこで予約をされた外来患者さんの面談をしたり、入院中の患者さんはスタッフからコンサルテーションを受けて話を聞いたり、スタッフのケアの相談を受けたりしています。人手が足りないときには、状況を見ながら外来をメインにやり、勤務時間外で精神看護専門看護師としての仕事をしています。

リエゾン(liaison)には、橋渡し・連携という意味があり、リエゾンナースとは精神看護専門看護師のこと。いろいろな診療科の看護師と協力して精神的ケアを行います。外来通院中・入院加療中の患者さんやその家族の不安や苦悩を取り除くのが目的で、精神科看護の専門的知識やスキルをもって、相談を受けたり、異なる診療科の医療職間や看護師どうしの連携をはかったりして、質の高い看護ケアを目指します。看護師の相談にものり、現場で働く看護師自身のメンタルヘルス支援も行います。


腫瘍精神科とは

がんになってしまった方の精神的なサポートをするところです。本来は健康に過ごされていた方が、病気になったことで不安が募ったり、眠れなかったり、気分が晴れずやる気が起こらなかったりする方をケアしています。がんにかかってしまった方の約半数は、精神的な問題を抱え、ケアを必要としているといわれています。適応障害といって一時的にうつ症状になる方、せん妄といって意識が混乱してつじつまが合わないことを言ってしまう方もいれば、感情や思考、意欲・行動などの精神的活動が日常的に停滞してしまう、うつ病まで重くなってしまう方もいます。
こうした適応障害、せん妄、うつ病の患者さんにとって一番大切なのは、「必要な治療を選択でき、自分らしく過ごせること」。それが患者さんにとって何よりの利益になると考えています。患者さんの心の問題にいち早くアプローチし、適切な治療・ケアを行い、支えていくのが腫瘍精神科医やリエゾンナースの役割と思っています。私に漠然とした不安を話すだけで気持ちが和らぐ患者さんもいますが、病的な状態の場合は精神科の医師と、薬の適応かどうかを評価しながら、支持的介入と薬物治療を通して治療がスムーズに行えるようにしています。
ただ、腫瘍精神科専用の入院病床がないので、外来レベルで対応できる人でないと診ることが難しい状況にあります。また、現在は、癌研有明病院に主治医がいる患者さんだけを診ていますが、今後は一緒に闘病されている患者さんのご家族まで、対応できるようにしたいと思っています。

1日の流れ

リエゾンナースとしての役割

リエゾンナースは、精神科と一般診療科をつなぐ、患者と医療者、医療者同士のコミュニケーションを推進して、人と人との関係をつなぐ役割を担っています。
患者さんのケアを行う上で、一番大切にしていることは、患者さんが感じ、体験している苦悩を、患者さんの立場で理解することです。精神看護では「共感」が大切と言われますが、共感はとても難しいものです。しかし、患者さんがこれまで何を大切におもい、どんな人生を歩んできた方なのか、今置かれている状況がどんな風に辛いのかなどを具体的に知ることで、患者さんの苦悩に寄り添えるのではないかと思います。そのためにはとにかく患者さんの話をよく聴き、患者さんが感じている世界を知ることが大切だと思っています。そして、患者さんが本来持っている適応力を信じて、本来持っている元気を取り戻していくのを見守っていくということを大切にしています。
また、人と人の関係をつなぐというのは、例えば、患者さんが、先生に治療のことについて質問したくても切り出せなかったり、些細なことは聞いてはいけないのではないかと質問を控えてしまったりして、悩んでいる場合があります。「こういう風に聞いてみたらどうですか」と提案して、先生との関係をつないだり、ご家族と患者さんの気持ちの行き違いがあれば、それぞれの思いを伝えて、家族間の関係性をつないだりすることもあります。
また、チーム医療を行う中で、患者さんの対応に困ったり、うまくいかない場合、患者さんの精神状態の評価だけでなく、関わるチーム全体の力や関係性をアセスメントし、どこに誰がどのように働きかけるのが最も効果的かを見極め、戦略的に介入していきます。  
そして、患者さんへの対応で悩んでいる看護師をフォローアップすることもリエゾンナースの役割です。看護師自身に対しては、行っているケアを他者が肯定することによって、自信を取り戻し、よりよいケアにつながることもあります。看護はいい結果が生まれて当たり前の面があり、素晴らしいケアをしていても誰かにいい評価を受ける機会はあまりないように思いますが、患者さんからだけでなく、チームメンバーやリエゾンナースのような第三者からポジティブフィードバックを受けることは、看護師としてのモチベーションを維持していく上でもとても大切なことではないかと思います。看護師それぞれが本来持っている力を発揮することは、チームにとっても患者さんにとっても良いことだと思いますので、看護師が自分らしく本来の力を発揮できるようなサポートができるといいなと思います。このように悩んでいる看護師の相談にのり、私が持っている知識やスキルを伝えることで悩みが解消でき、少しでも患者さんの気持ちに近づき、質の高い看護ができるよう看護師を支援できればと思っています。実際にカンファレンス(有明病院ではカンファレンスといって、各病棟や外来の所属看護師が中心となった情報交換やケア方針を決定する時間を設けています。)に参加して、看護師がどんなことにどれだけ困っているのか、どんな気持ちで日々ケアしているのか耳を傾け、一緒にケアの方針を考えたり、対応に困っていることがあれば解決の糸口をアドバイスしたりしています。

リエゾンナースを目指したきっかけ

看護師になった頃から精神的ケアには興味があり、臨床6年目で緩和ケアを学びたいと思い、某病院の緩和ケア病棟で働いていました。緩和ケア病棟では3年間勤めましたが、ナースたちが一生懸命に患者さんやご家族をケアする一方で、ナース自身がうつ状態やPTSDになって精神的に病んでしまうことがありました。それで、働けなくなってしまった看護師は誰がサポートをしてくれるのだろうと考えるようになったのです。
本来ケアする立場の看護師が、病んでしまう現場背景もあるなかで、「新人ナースの職場不適応、早期離職や中堅ナースのバーンアウトなどの問題に対し、看護師自身のセルフケアに任せるだけではなく、看護師自身が生き生きとやりがいを持って働けるように、看護師を支援する体制を築きたい」――と、ますます強く思うようになりました。スタッフのメンタルヘルスのケア、支援ができる存在になりたいと思ったのが一番の動機です。ナースが心身共に健康な状態で看護できることは、患者さんにより良いケアを提供する上でもとても重要なことだと思っています。

オフの日は何をして過ごしますか?

林田 由美子さん

自宅でしっかりと休息を取ります。何も考えない時間を大事にしています。月に1回程度は、仲間とバスケットボールを楽しんでいます。バスケットはプロの試合を見るもの好きですね!


資格取得について

学校によっては働きながら勉強することも可能でしたが、今まで臨床の現場にいたので、学業と仕事を両立していく自信がありませんでした。また、東京から通いながら臨床と勉強というのは現実的に難しいと考え、一度病院を辞めることを決意し、聖路加看護大学で2年間学業に専念しました。
専門看護師の認定試験については、私が大学院を修了した当時、修了後1年間以上の実務経験がないと試験を受けられませんでした(2011年現在は、「実務研修5年(3年以上は専門看護分野の実務研修+大学院修了後の実務研修は6ヶ月以上)」となっています)。試験は、書類審査と筆記試験(事例報告を含む)で、リエゾンナースとしての役割を担って介入した事例をまとめるのはすごく大変でした。
いまでも、精神分野の仲間とはよく集まっています。大学の講師になった仲間から講義を依頼され、精神看護の授業を行ったり、大学院のゼミに参加したり、事例検討会や、日本サイコオンコロジー学会主催のリエゾンナースの事例検討会で集まったりしています。

資格取得後について

大学院を修了して癌研有明病院に移り、2年目に認定試験を受けることができ、資格を取得しました。当院には、精神的ケアを必要とする患者さんがたくさんいらっしゃいます。腫瘍精神科では様々な科から紹介された患者さんを診察しています。去年から、精神科医は3人(常勤医1名+非常勤医2名)に増えて、より患者さんへのサポートができる体制となっています。今後は看護師のスキルアップやメンタルヘルスサポートに力を入れたいです。スタッフに気軽に声をかけてもらえる環境を築き、部署のカンファレンスにも積極的に参加し、質の高いチーム医療が行われるように、リソースの一つとして使ってもらえるようになればと思っています。自分の面接技術やコミュニケーション能力も上げていきたいですね。

これから精神看護専門看護師を目指す方に一言

専門看護師には、スタッフが介入に行き詰ったり、対応が難しいと感じる患者さんのケアの依頼が来ることが多いので、何もできないと無力感に苛まれたり、落ち込んだりすることもありますが、患者さんが自分らしさを取り戻し、元気になっていく過程を見守ることができるのはとてもやりがいのあることです。私は精神看護を学んだことで、それまでは理解し難かった患者さんの行動や言動の意味であったり、自分自身の心の動きがわかるようになり、患者さんの辛さに負担なく寄り添えるようになったように思います。精神的ケアはどんな患者さんにも必要なケアですし、一人でも多くの方に精神看護のスペシャリストを目指していただけると嬉しいです。

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