看護師キャリアガイド

働くナースのスキルアップ

キャリア総論

そもそも「看護師のキャリア」ってどんなもの?

少し前まで、看護師のキャリアといえば病院につとめる以外に殆ど選択肢がありませんでした。臨床の現場は常に深刻な看護師不足で、看護教育も即戦力の育成に比重がおかれていました。看護師が多様なキャリアを描く環境は整っておらず、教育施設を卒業後は病院に就職し、職場が数回変わったとしても、最後まで病院看護師として勤め上げることが一般的でした。

ところが、数年前から看護師のキャリア選択肢はどんどん広がりを見せています。病院看護師であっても、日々の看護にあたるだけではなく、専門性を極めて専門看護師や認定看護師になることができます。ケアマネジャーの資格を取得したり、訪問看護ステーションを起業して介護の領域に参入する看護師も大勢見られるようになりました。なかには、医療コンサルティング会社に就職するなど、病院以外のフィールドで活躍する看護師も徐々に増えてきています。

社会の変化や法改正で、看護師の役割が変わった

こうして、看護師のキャリアに多様な選択肢が生まれた背景には、何があるのでしょうか? その答えの一つが、社会全体の大きな変化です。

少子高齢化が進むにつれ、保健・医療・福祉のニーズは右肩上がりに高まっています。また、国民は医療の「質」を求めるようにもなってきました。より高度で安全な医療を、便利に受けられるようになってほしいと思うニーズが増えたのです。一方で、医療財政は危機的状況に追い込まれ、90年代後半以降、医療費は抑制される流れにありました。財源が足りないのに、質の高い医療を求められるのですから病院は大変です。病院組織のなかで、もっとも人数の多い看護師の存在が、以前に増して重要性を帯びるようになりました。

看護師の評価の高まりは、診療報酬や法律の改正にも反映されています。 2006年の診療報酬改定では、看護師の人員配置に「7対1」が設けられ、大病院は手厚い看護体制を整えようと躍起になりました。また、訪問診療が診療報酬の対象として整備され、訪問看護師の活躍の場も広がりました。
2009年には「保健師助産師看護師法」や「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が改正され、看護師の卒後臨床研修が求められるようにもなっています(努力義務)。かつては、いわゆるOJTばかりで、日々の臨床のなかから各人がスキルを身につけていましたが、現在は国や病院が看護師のスキルアップを応援してくれるのです。

このように看護師のキャリアに選択肢が増え、国も後押しする方向にありますから、看護師一人ひとりが、「私はどんなキャリアを構築しよう?」と考えることは、今後ますます大切になるといえるでしょう。
もっと自分がイキイキとするには、どうしたらよいか。転職? 起業? 専門資格の取得? いくつもの選択肢のなかから、看護師としてもっとも楽しく過ごせるキャリアを選ぶ時代になってきたのです。

自分の「キャリア・アンカー」を確認してみよう

キャリアアンカーを考えてるイラスト

では、具体的にどうやって自分のキャリアビジョンを描くとよいのでしょうか。ヒントとなるのが、「キャリア・アンカー」です。 「アンカー」とは、船につなぐ「錨(いかり)」のこと。即ちキャリア・アンカーとは、キャリアを考えるときに揺らがない基礎となる部分。自分のキャリアにおいて、もっとも大切な判断基準を指します。人によって、何をキャリア・アンカーとするかは様々ですが、アメリカの心理学者・エドガー H. シャインは次の5つのカテゴリーに分類しました。

◆テクニカルタイプ
特定の分野において技術を高めることを重視する。幅広い能力を求められる仕事より、限られた領域で自分の技能を発揮したいと思うタイプ。
◆マネージャータイプ
リーダーシップを発揮し、組織を管理することに喜びを見いだすタイプ。責任の大きい仕事が好きで、出世願望も強い。
◆フリーランスタイプ
自分のペース、手法で仕事をこなし、ある程度、自由度の高い環境を求める。組織に属することを窮屈に感じるタイプ。
◆安定タイプ
まわりの人と同一であることを大切にするタイプ。高い地位や専門制にはこだわらず、安心感の保てる環境を好む。
◆クリエイティブタイプ
起業したり有名になったり、自分を高めることでモチベーションがアップする。仕事の創造性を重視する。

あなたに合ったキャリアビジョンは?

いかがでしょう? これまでの自分のキャリアや、日頃考えていることから、当てはまりそうなものはあったでしょうか。シャインによる5分類は、もともと一般産業界向けのものですが、看護師のキャリア形成においても参考にすることができます。
例えば、「テクニカルタイプ」の傾向がある方は、専門看護師や認定看護師を目指すキャリアが向いているのかもしれません。「マネージャータイプ」がしっくりくる方は、ケアマネジャーや、認定看護管理者など、周囲を管理するキャリアを選ぶ道もあるでしょう。「クリエイティブタイプかな?」と思った方には、開業ナースが合っている可能性もあります。

もちろん、キャリア・アンカーの自己チェックだけで今後の進むべき道が判断できるものではありません。女性は年齢に応じてライフステージが大きく変化することもあって一概には言えませんが、自分の性格を振返り、キャリア・アンカーがどのタイプかを知ることは、先々を考える際の目安にはなります。看護師の目の前に広がる多様な選択肢のなかから、もっとも自分にあったキャリアを選びやすくなるのです。

覚えておきたい看護師のキャリア9タイプ

ここで、改めて看護師のキャリアにおける主な選択肢について解説しましょう。それぞれの特性をよく踏まえて、自分のキャリアをじっくり考えてみてはいかがでしょうか?

1 専門看護師・認定看護師
どちらも日本看護協会が認定する専門資格。専門看護師は、ほかの看護職等へのコンサルテーションや、保健・医療・福祉チームのコーディネートなどを通じて、困難な健康問題を抱えた患者に質の高い看護を提供できると認められた看護師。一方、認定看護師は、緩和ケアや皮膚・排泄ケアといった特定の分野において、熟練した技術と知識があると認められた看護師のこと。
2 認定看護管理者
日本看護協会の認定資格。管理者としての資質に優れ、組織を発展させることができると認められた看護師。専門看護師や認定看護師がスペシャリストコースとすると、認定看護管理者はジェネラリストの位置づけ。
3 臨床研究コーディネーター、遺伝カウンセラーなど新たな専門職
新しく複雑な医療領域において、患者や家族、医療者をコーディネートする看護師。学会の認定制度がある。
4 開業ナース
ケアマネジャーや訪問看護ステーションで独立開業するキャリア。介護の在宅化が進むにつれて、期待度が高まっている。
5 呼吸療法認定士、日本糖尿病療養指導士などの資格取得
特定の領域のスキルを承認する学会認定資格。栄養サポートチーム専門療法士なども含まれる。
6 進学(大学/通信制大学)
看護専門学校や短大を卒業した看護師が大学資格を取得するキャリア。3年次から編入できる大学のほか、最短1年で看護学士を取得できる通信大学を受講する方法もある。
7 大学院進学
看護大学を卒業した看護師が、さらに知識を深めるために開かれた道。最近では、専門学校や短大卒の看護師が受講できる大学院も出てきた。通信制大学院もある。
8 看護留学
海外の看護を学ぶための留学。病院によっては、研修として短期留学をさせてくれるケースもある。
9 企業への就職
コンサルティング会社や製薬メーカーなど、看護師を募集する一般企業は少なくありません。看護のスキルを活かした新たな分野へのチャレンジ。

それぞれのキャリアの詳細について、実際の看護師にインタビューを行いました。次のコンテンツもあわせてご覧ください。

キャリアップにモチベーションを燃やすイラスト

看護師のキャリアアップに役立つ資格とは?

認定看護師
ある特定分野において、実践・指導・相談の役割を果たし、看護ケアの広がりと質の向上を図ることに貢献します。(詳しく見る)
専門看護師
ある特定分野において、実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究の役割を果たし、保健医療福祉や看護学の発展に貢献します。(詳しく見る)
認定看護師と専門看護師の違い
求められる実務内容・ポジションに違いがあります。それぞれの特定分野があり、資格認定システムがあります。(詳しく見る)

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