看護師の業務においても上司と部下との連携が重要であることはいうまでもありませんが、職場での上下関係を年齢や勤務年数が邪魔をするということがあります。昨今、仕事上では年齢や勤務年数は関係ないという風潮も社会全体で強くなってきていますが、現実には年上の看護師や勤務年数の長い看護師を目の前にすると、組織上は上の立場にあっても余計な気を遣い、うまく指示や指導ができないという話を耳にします。また、逆に指示や指導をされる側にもそのような空気が伝わり、人間関係がギクシャクしてしまうということがあるようです。それでは、実際にそのような立場にあった看護師さんはどのようにしてそれらを克服したのか、実例をみて参考にしましょう。
二人の看護師(例)
Aさん
33歳 勤務9年目
まじめで気配りのできる主任看護師1年目
Bさん
38歳 勤務13年目
口数は少ないが、周りから頼りにされている経験豊富なベテラン看護師
職場での上下関係
Aさんは、そのまじめな仕事ぶりが認められ、その年主任看護師になりました。最初は、職場をまとめていこうと持ち前の明るさで頑張っていましたが、主任となって2ヶ月が経過した頃、Aさんはその責務に自信をなくし始めていました。年上で経験も多い看護師の方が自分よりも知識が多く、そのような部下に対して的確な指示や指導が行えないという現実があったからです。なかでも看護師のBさんはとても仕事ができ、周りの看護師も自分よりもBさんに頼ることが多いように感じ、本来ならBさんが主任看護師になるべきなのでは、とAさんはさらに悩むようになりました。そのことを師長にも相談しましたが、「Bさんは、子育てによる休業期間が長かったので主任になれなかっただけだから、あなたは気にしないで。本人もそれを十分理解しているし。あなたはBさんにバックアップしてもらいながら、経験を積んでいけばいいのよ」と言われてしまいました。
看護師同士のコミュニケーション
苦手意識
Aさんは自分のなかでBさんに対する苦手意識が次第に強くなるのを感じていました。それはBさんに対するぎこちない態度となって表れていました。一方でBさんもそんなAさんに対して自分から積極的に話すようなこともせず、本来連携を取ってするべき仕事をそれぞれが個別にこなすということも増えてきました。
自己理解と他者理解

Aさんは何とかこの状況を変えなければと考え、Bさんが自分をどのように見ているのか、Bさんの本音を聞き出すことに決めました。ただ、どのように話を切り出してよいか分からず、看護師になったばかりの頃お世話になり今は別の病院で師長をしている元恩師に相談をしてみました。やはりその恩師も若い頃、同じような悩みを抱えていたといい、「相手を理解したいのであれば、まずは自分を理解すること」、「そして、自分の感じていること、思っていることを素直に相手に伝えれば、相手からも率直な意見をもらえるはず」というアドバイスをもらいました。
その数日後、Aさんは、Bさんを呼び出してBさんに自分の素直な気持ちを伝えました。「自分はまだ新米主任なので多くの不安を抱えていること」、「仕事のキャリアや人間性からBさんの方が主任に適しているのではないかと思っていること」、「自分の仕事振りに対してBさんがどう思っているか気になっていること」など。するとBさんも「確かに自分の方が年上なのでAさんに負けたくないという気持ちはある。だけど途中で子育てによる長期休業を選んだのは自分だし、自分の中ではもう納得している」、「Aさんが年上の私を扱いにくいと思っているのではと自分も不安に思っている」、「Aさんはもっと自分に自信をもって仕事した方がよいのでは」など正直な気持ちをAさんに話しました。そして最後に「もちろんAさんのバックアップは惜しみません。私はAさんの部下なのですから」という言葉がありました。その後、Aさんは自信を取戻し、Bさんのバックアップのもと頼りがいのある主任看護師へと少しずつ成長していきました。また、Bさんも次期主任候補として病院から期待をされています。
お互いに向き合って、意思の疎通を図ることを心がけましょう!
AさんとBさんは、お互いに相手がどのように思っているかを理解することにより、それぞれ誤解を解くことができ、良好な関係を築くことができました。このように、お互いに向き合って、意思疎通を図ることが人間関係やコミュニケーションでは最も重要です。特に若い看護師さんの中には、患者さんにどう声をかけたらよいか、逆に声をかけられたときにはどう返してよいか分からないという人も少なくありませんが、その場合も同様です。相手を理解するには、まず、自己を理解し、素直な自己表現をすることが大切です。




