医療の現場では、看護師同士の連携に加え、看護師と医師との連携も当然に重要になります。そして、効果的な連携を行うことができるかどうかは、看護師と医師の信頼関係の良し悪しにかかっているといえます。そんな中「○○医師とうまくやっていく自信がない」、「○○医師は怖いので話かけづらい」、「○○医師の下では働きなくない」などといった医師との人間関係に悩んでいる看護師の声も聞きます。そこで今回は、実際にそのような立場にあった看護師と医師がどのように信頼関係を築いていったのか、実例をみて参考にしましょう。
看護師と医師(例)
看護師 Aさん
36歳 勤務13年目
几帳面で経験豊富な
中堅看護師
医師 Bさん
30歳 勤務5年目
口数が少なくプライドの
高い若手医師
医師 Cさん
51歳 勤務27年目
病院・患者さんからの
信頼も厚いベテラン医師
看護師Aさんは、まだ経験の浅い医師Bさんに対して日頃から不満を感じていました。指示に一貫性のないBさんの頼りのなさがその主な原因だったようです。
そしてあるとき、たまりかねたAさんはBさんに対し「どうしてもっと適切な指示を出してくれないのですか!」と抗議をしました。Bさんは顔にこそだしませんでしたが、相当気分を害して、それからBさんのAさんに対する態度は冷たくなり、コミュニケーションがうまくとれなくなってしまいました。
Aさんも最初は少し言い過ぎたかなと考えましたが、他の看護師と話している時にも、自分と同じ考えを持っている人も多く、「私が言わなければ変わらない」と自分に言い聞かせ、Bさんとの関係をあえて修復しようとはしませんでした。
看護士と医師のコミュニケーション
ベテラン医師の本音

AさんとBさんのぎこちないコミュニケーションは、患者さんへの対応の遅れとして次第に表面化してきました。
その様な状況を察知して他科のベテラン医師Cさんがある日Aさんを呼び出して次のような話を始めました。『君の気持も良く分かるが少しBさんの気持ちも考えてあげて欲しい。僕たち医師は、「責任者としてつねに正しい答えを知っているはずだ」と言われるが、特に医師になってまだ経験の浅いうちはそんなになんでも知っているわけではない。でも、患者さんや他の看護師の前で「あなたの方が経験があってよく知っているから教えてください」とはやはり言いづらいもの。堂々としているように見えても、「今日は困ったことが起きませんように」、「看護師から難しいことを聞かれませんように」って、内心ヒヤヒヤしているものなんだ』
Cさんは普段からとても明るく気さくで堂々としており、他の医師や看護師からもとても信頼の厚い方なので、Aさんはとても意外でした。
Cさんは続けて次のように話ました。『医師も看護師も「患者さんを幸せにすること」が使命のはず。医師と看護師の連携が上手く取れなければ患者さんを幸せにすることなどとてもできない。Bさんにも良いところはたくさんあるから、悪いところだけに焦点を当てず、Bさんの良いところにも目を向けてほしい。そしてBさんの足りないところをフォローする良きパートナーとして良好な信頼関係を築いていってもらいたい』
意識の変化
AさんはCさんの話を聞いて、「患者さんを幸せにする」という自らの使命を忘れていた自分に気づきました。医師への不満によるコミュニケーション不足から患者さんに迷惑をかけてしまったことを後悔しました。 また、Bさんの「患者に対して細やかな気配りができるところ」や「患者のために必要とあれば残業や休日出勤も自ら進んで行うところ」といった良い面を思い返し、あらためて認識することで、不思議とBさんのちょっとした頼りなさも許せるようになりました。そのようなAさんの心境の変化は態度となって表れ、それがBさんにも伝わり、二人の信頼関係は少しずつ回復していきました。
相手の良いところに目を向けて良好な信頼関係を築きましょう!
Aさんは自らの使命を再認識することに加え、相手の良いところにも目を向けることで意識が変わり、その結果、良好な信頼関係を築くことができました。これは医師と看護師の関係だけに限られることではありませんが、チームプレイが重要となる医療の現場ではより効果的といえるでしょう。




